鳥取県西部地震関連情報
最新の情報は、島根大学法文学部歴史社会講座の中の「鳥取県西部地震(山陰中部地震)被災史料救出ネットワーク」にあります。
史料ネット情報は、http://wwwsoc.nacsis.ac.jp/cgi-bin/rekihyo/teq/news.cgiにもあります。
(小林)
2000年12月8日 「鳥取県西部地震(山陰中部地震)被災史料救出ネットワーク」の発足のお知らせと 被災史料救援活動への支援のお願い 鳥取県西部地震(山陰中部地震)被災史料救出ネットワーク (代表:竹永三男〈島根大学教授〉) 歴史資料ネットワーク(代表:奥村弘〈神戸大学助教授〉) 10月6日に発生した鳥取県西部地震は、鳥取・島根両県を中心に多くの方々が負傷 され、家屋・農地・港湾施設や交通網に甚大な被害をもたらしましたが、それまで地域 で大切に守り伝えられてきた古文書や民具など歴史資料も滅失の危機に瀕しました。こ うした中で、阪神淡路大震災に際して、被災史料保全のために発足した歴史資料ネット ワークでは、今回の地震直後から被災地周辺の関係機関・関係者と連絡をとり、現地も 訪ねて地元の研究者と被災状況の緊急調査を行うとともに、対応を協議しました。その 結果、今回の地震の被災地でも地元自治体と共に、歴史資料などの文化遺産の保全救出 活動を開始することにしました。 既に10月下旬から現在まで土・日・祝日を中心に、被災家屋から古文書・民具を搬 出し、地元の自治体で用意された公的施設に保管する活動(鳥取県日野町等)や被災地 の文化財の巡回調査(同県西伯・会見・溝口町、岡山県新見市等)を実施しました。 この活動には鳥取・島根・岡山や京阪神から研究者・学生など、のべ200名以上が参 加しました。こうして救出された史料等は阪神淡路大震災と同様、地元自治体が用意し た施設に保管されています。 この活動は当初、鳥取・島根・岡山など地元の大学・高専や公文書館・図書館などの 史料保存機関関係者が、歴史資料ネットワークと協力して始めましたが、11月23日に改 めて「鳥取県西部地震(山陰中部地震)被災史料救出ネットワーク(略称:山陰史料ネ ット)」を発足させました《代表:竹永三男(島根大学)事務局長:小林准士(島根大 学)運営委員:岸本覚(鳥取大学)、山藤良治(米子高専)、内田文恵(島根県立図書 館)今津勝紀(岡山大学)》。歴史資料ネットワークは、この山陰史料ネットに参加 し、引き続き連絡と支援のセンターとして、全国からの募金のとりまとめや他地域から のボランティアの調整にあたっています。 今回の地震では、阪神淡路大震災に比べ、幸い人的被害は少なかったものの、空家や 高齢者のみのお宅が多く、また復旧に伴なう家屋の解体撤去のテンポが速いなど、地域 文化財の保全には困難な条件も抱えています。被災家屋が山間部に散在していることも あり、この活動はかなりの長期間にわたります。 皆様におかれましては、大規模災害から地域遺産を守り、後世に伝えるというこの活 動の意義にご理解をいただき、救出作業や搬出史料の整理・巡回調査、被災されたお宅 への紹介や情報提供など、多様な形でのご参加・ご協力をお願い申し上げます。 また阪神淡路大震災後の活動と同様、今回も、保険加入料を始め様々な経費が必要で す。特に今回の被災地では、救出活動で大きな役割を果すべき大学が少なく、従って遠 隔地からの参加者が多くなります。そこで、活動に参加する学生・大学院生に対して は、交通・宿泊費など最小限の補助をしたいと考えています。私どもの活動を支えるた めの募金をお寄せいただきますよう、併せてお願い申し上げます。 郵便振替による募金の振込先 口座番号 00930−1−53945 加入者名 歴史資料ネットワーク *通信欄に「鳥取県西部地震」などと、明記してください。 連絡・問合せ先 鳥取県西部地震(山陰中部地震)被災史料救出ネットワーク 〒690−8504 松江市西川津町1060 島根大学法文学部気付 TEL0852−32−6191(小林准士研究室) Eメール junji@soc.shimane-u.ac.jp 歴史資料ネットワーク 〒657−8501 灘区六甲台町1−1 神戸大学文学部内 TEL/FAX078−803−5565 Eメール yfujita@lit.kobe-u.ac.jp
山陰大地震 史料ネット情報 10号 1.11月18・19日のレスキュー活動 1日目の18日(土)は、3つのグループに分かれ、古い薬局など黒坂町内の3軒の レスキューを実施した。搬出作業を終えた後、保管場所の公民館で仮整理やふすまの 枠外しを、午後4〜5時ごろまでおこなう。NHK鳥取放送局の取材があり、この日 の作業の様子等は、夕方のローカルニュースと夜の関西ニュースで報道された。また 翌日の日本海新聞朝刊にも掲載される。 2日目の19日(日)は、久住・下榎と下黒坂の二手に分かれて活動を開始。このう ち久住地区では午前中、町教委文化財担当と巡回調査をしたが、危険家屋の解体は既 にほぼ終了した状態であった。そのうち母屋を取り壊した家から、残っていた襖2枚 等を預かる。また別の家からも、たたら製鉄により出来た鉄塊一つを預かった。午後 から下榎地区に移り 午後3時半ぐらいまで、3軒を訪問調査。その中の1軒は、訪 問の直前に取り壊されたばかり。ブリキケースや箪笥の抽斗に収められた文書類あっ たので、家人と相談し、概要を記録した上で、家人に保管をお願いした。この後、レ スキューの予定があるので、黒坂に戻り、午後4時〜5時まで搬出作業、その後、簡 単な整理をして、午後6時ごろ終了。 他方の下黒坂地区では午前中、2週間前にレスキューした民家で、さらに離れの壁紙 裏文書の取り外しを実施。一部は途中で巡回調査にまわり、11軒を訪問。うち1軒で は解体前の片付け中で、史料もあったので、即、レスキューに切り替える。他に解体 の有無が未定の家2軒があり、また全部を回れなかったので、後日の調査が必要であ る。 2.自治体への働きかけと、その効果 島根大の竹永氏等が中心となって、鳥取県西部と島根県東部の市町教育委員会に、被 災史料救出活動の趣旨と協力要請、および住民向け広報活動の要請を、先々週から先 週にかけて、文書で依頼していた。これを受けて、各町村では、防災放送での呼びか けや被害調査などを始めていたが、21日に会見町教委の文化財担当より電話があり、 有線放送等で町民に何度か史料保全を呼びかけたところ、2、3軒の家から、文書の 提供があったという知らせが入った。これらのお宅では、文書は町に寄贈したいが、 解読できないので内容を教えてほしいと希望している。
山陰大地震 史料ネット情報 9号 1.岡山県側の現状について 8号でお知らせしたように、11月4日の黒坂レスキュー中止に伴ない、参加予定 だった岡山大の今津氏等が、岡山県新見市の被災状況を調査したが、その詳細は以下 のとおり。 まず教育委員会に立ち寄り、文化財保護主事に被災歴史資料への対応を要請。岡山側 の被害は同市千屋地区を中心に、全壊6、半壊19。被害家屋は山間・谷筋に点在し ているとのこと。 その後、ボランティア本部のある千屋市民センタ−の田中賢氏を訪問。ビラの全戸配 布を要請し、承諾を得る。 さらに千屋地区の被災民家12軒を巡回調査。全壊6軒のうち、1件は既に解体済 み、1件は解体中だが、内のものは処分済み。岡山側の解体はすべてボランティア頼 み。残り4軒の解体は、年明けになりそうな見こみ。 2.溝口町の調査・レスキューと日南町の状況 島根大の小林氏等が13日に、溝口町を訪問。教育委員会文化財担当者と今後の 対応を協議し、(1)調査・救出・整理等の作業は、教育委員会との連携で行い、配 布ビラも日野町等のものを参考に、教育委員会が作成、(2)史料の保管場所は、旧 日光小学校校舎とする。(3)民具などは、事情に詳しい町の文化財保護審議委員が 対応、(4)解体予定の家々には、教委から連絡、史料の有無、救出の要否を確認 し、島根大に連絡する、などの対応を決めた。 その後、溝口町から日野町黒坂方面への谷ぞいの集落をまわり、解体情報のあった 6軒を訪問、うち4軒から史料を預かる。溝口町は、解体の進行が早く、既に被災家 屋の半分ほどが終了してる模様で、早急な対応が必要とのこと。 8日付けの文書で保全依頼をしていた日南町の教育長に、島根大の竹永氏が電話で 状況を聞く。被害家屋は半壊は3〜4戸で解体予定があるのは1軒。史料などの保全 については総務課に要請し、防災無線で町内に呼びかける予定、という回答を得る。 3.今後の予定など 11月18・19日(土・日) 日野町、溝口町などのレスキューと調査 (できれば17・20日も) 11月25・26日(土・日)場所は未定 11・12日に被災地周辺で開催された歴史関係の学会や研究会で、活動参加の申し 入れや募金への協力がありましたが、まだまだ人も資金も不足しています。 8号でも訴えましたが、他地域からでも、条件のあう人は是非、参加してください。 募金への協力もよろしくお願いします。 連絡先 〒657−8501 灘区六甲台町1−1 神戸大学文学部内 TEL/FAX078−803−5565 yfujita@lit.kobe.-u.ac.jp または、島根大学法文学部小林研究室 junji@soc.shimane-u.ac.jp 募金振込先 (郵便振替) 口座番号 00930−1−53945 加入者名 歴史資料ネットワーク 「レスキューの報道記事」 神戸新聞11月8日 http://www.kobe-np.co.jp/2000/11/08/kobenews4.html 京都新聞11月14日 http://www.kyoto-np.co.jp/kp/topics/2000nov/14/11.html
山陰大地震 史料ネット情報 8号 発信者の事情で前号から10日ほど、間隔が空きましたが、この間も被災家屋からの 歴史資料等の救出など、活動は続いています。 1.11月5日に日野町黒坂地区で第2次レスキューを実施 前回(10月28・29日)に続き、被害が甚大で旧家の解体が進行中の黒坂地 区で、2回目の歴史資料レスキューが実施された。活動参加者は17名 で、鳥取や 島根など地元の大学や関係機関や、神戸など関西方面からの参加者に、今回は岡山大 学からも教員・学生4名も加わった。 解体予定の旧家など5軒より、近世の行政文書(旧黒坂町役場より預かっていた もの)や砂鉄運上の帳簿など、古文書、古記録、古書簡、古地図や、文書入り箪笥抽 斗(たんすひきだし)、下張り文書付き襖(ふすま)など多数を救出、公民館に運ん だ。 中には骨董屋が何度も訪れており、搬出対象のほとんどない家もあった。また文書入 り箪笥抽斗のあった家では、抽斗二つ分の古文書を既にに焼いており、残っていた三 つ分を間一髪で保全したケースとなった。 一方、救出史料の保管先となっている公民館では、前回搬入した分も含めて、襖 の枠をはずす作業もおこなった。142枚が解体され、残りは6枚となった。公民館 の保管場所は8日に行事があり、別の施設に移す予定であったが、公民館側の配慮で 館内の別の場所への移動で済むことになった。 また同時に、前回まで入ってなかった黒坂の下地区を巡回調査を実施し、史料を 持っている解体予定の家を3軒ほど把握。他にも史料のある被災家屋や蔵がある2軒 の情報を、公民館や地元の歴史研修会のメンバーから得た。 2.11月3・4日に会見町・西伯町を巡回調査 当初、黒坂のレスキュー実施予定だった3・4日は、土砂崩れによる道路寸断の ため計画を変更し、車の入れる会見町・西伯町を巡回調査となった。参加者はのべ9 名。 3日はまず会見町の教育委員会を訪れ、文化財担当者と被害状況と町の対応につ いて情報交換。その後、被災した龍門寺を訪問、現状を調査した。それから西伯町に 入り、まず金山地区の旧家・生田家を訪問、同家や周辺の被害状況を調査。同家では 3つの蔵のうち1つを撤去する予定というので、古文書等の保全を申し入れた。次い で伐株地区を訪問したが、区長との懇談中に震度4の余震が起こり、山崩れなどが発 生、時間も遅いので調査を中断して引き返した。 4日は昨日に続き、西伯町の伐株地区から巡回。この地区は被害が大きく。区長 宅は母屋は全壊指定で解体予定という。隣接する蔵から幕末の棟札等を保全し、町立 図書館に預ける。地区内の11軒と神社を訪問。うち2軒の蔵を調査し、家人に古典籍 などの保全を要請した。全壊指定を受け立ち入り出来ない家屋中にも古文書類がある 可能性 が高い。4軒が不在で、また既に蔵を撤去した家が一軒あった。 その後、2グループに分かれて、武信・道河内・徳長地区と、上中谷地区などを巡 回調査。すでに史料を県立公文書館に預けた家や、地震以前に無くなっていた家もあっ た。西伯町の激震地区は、谷合に集落が散在しており、巡回形式の調査はかなり時間 が必要となる。解体で手遅れにならないよう町教委と対応を詰める必要がある。 またこの4日には、岡山大学のグループが、新見市千屋地区など岡山県側の被害 状況の調査をおこなった。 3、被災地の現状について 以下は、被災地におけるレスキューや調査の中心となっている島根大学の小林准 士氏からの、各市町ごとの現状報告である。 日野町 黒坂は一定の目途が立っていますが、周辺地区(下黒坂、奥渡、久住など)はまだ状 況が把握できていません。古い家も多く、対応が必要です。 溝口町 13日(月)に私が予備調査をする予定です。現地では地元研究者が自主的にまわっ てらっしゃいますが、今日、教育委員会に電話で問い合わせたところ、文化財担当の 方が、被災者からの要請をうけて回り、民具を預かるなどしておられるということで した。 ただし、対応が「遅きに失した」と反省されていました。 日南町 まだ状況を把握していません。 町域の東端部分(生山周辺)は見ておく必要があるかもしれません。 会見町 11月3日時点での解体申請家屋のリストを把握しています。これによると、母屋1 3、蔵11、離れ8、不明2(納屋などは除いてあります)の解体申請が出ていま す。今後、この分について解体予定、史料の有無等について確認する作業が残ってい ます。 西伯町 3、4日にパトロールしてから特に動いていません。ただ、教育委の野口さんから は、次ぎはいつ来られるかという趣旨の問い合わせがありました。 米子市・境港市 10月22日のパトロール以来、とくに進展はないです。 島根県伯太町 10月22日のパトロール以来、進展はないです。ただ、伯太町須山地区では、いま だ余震が続いており、いちど現地に入って、状況を把握する必要があります。 同安来市 島根県の発表では、全壊10棟、半壊291棟、一部損壊1693棟もあり、全半壊 で301棟もありますが、まだ現地をまわってはいません。教育委員会へのお願いの みとなっています。 4.これからの活動予定 11月13日(月) 溝口町の予備調査 11月18・19日(土・日) 現状調査とレスキュー(できれば17・20日も) 5.参加・支援の訴え 地元の研究者は高齢者が多いため、あまり動けず、島根大学などに活動負担が集中 してます。他地域からでも、条件のあう人は是非、参加してください。また経費も参 加者の立替えに頼っている現状です。募金への協力もよろしくお願いします。 連絡・振込先 〒657−8501 灘区六甲台町1−1 神戸大学文学部内 TEL/FAX078−803−5565 mail: yfujita@lit.kobe.-u.ac.jp (郵便振替) 口座番号 00930−1−53945 加入者名 歴史資料ネット ワーク
山陰大地震 史料ネット情報7号 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 1.28・29日の日野町黒坂地区の緊急レスキューの報告 (参加された島根大学の小林准士さん、神戸深江生活文化史料館の大国正美さんから の報告を要約しましたが、文責は史料ネットにあります) 今回のレスキューでは、両日で合計10軒の旧家から、史料・文化財(ふすま13 4枚、段ボール箱数十箱、その他屏風・什器類など)を民家から救出し、日野町公民 館に運びんだ。当地区は撤去作業が進行中で、救出作業は解体と競争するように行な われた。阪神淡路大震災の時にもなかったようなハイペースな作業で、雨の降る中で の困難なもので、参加者のなかには疲労も見られた。また雨によるがけ崩れでJR伯 備線がストップし、作業後の帰還にも支障がでた。 参加者は28日が23人、29日が25人ののべ43人。地元の島根の他、京都・ 神戸・大阪など関西方面からの参加者も多かった。 2.被災地の状況と今後の課題 黒坂地区では、現在解体作業が進行している上(かみ。街道の南、川上)地区に加 え、、被害が相対的に少ないが古い家の多い下(下、街道の北の方)地区でも、解体 がきまっている旧家があり、解体日程の確認、所在調査、救出活動が必要。根雨、久 住、下黒坂、別所、榎市、中菅など、黒坂地区以外の日野町域でも、解体の決まって いる家がかなりあり、レスキューの対象となる旧家も、ざっと12、3軒ありそう だ。これら地域への調査活動に加え、西伯町など未調査の町村への対応が、今後の課 題である。 また今回のレスキューで史料類を運び込んだ公民館は、11月8日に行事が予定さ れているで、それまでに保管物を黒坂社会体育館に移す必要あり。さらに作業のしや すい旧日野保育所(現在は片付けが必要な状態)に、再移動が予定されており、移動 前の作業(ふすまの解体など)と、移動ための人員が必要である。 3、次回のレスキュー 11月3・4・5日(連休)に2回目の活動を実施である。特定の大学(今回は島根 大・京都造形大・神戸大など)からの連続動員は、学生ボランティアにとっても負担 が大きく、できるだけ多くの大学やグループに、入れ替わり立ち替わり、入ってもら う必要がある。また今回は学部生が多く、作業リーダーとなる院生以上が不足したこ とや、車と運転手の不足した。また資材では、マスクや竹へら、カッターナイフ、金 槌などが不十分であった。これらの確保が次回の課題である。 4、活動経費の確保 救出活動では、資材や保険料(今回もボランティア保険は現地で申し込めば無料だが 余震に有効な天災対応保険は有料)などを始め、多くの経費がかかります。また、有 職者でない学生・院生などは、参加しやすいよう交通・宿泊費の補助も必要だと考え ます。 現在、学会誌に救援募金呼びかけを掲載してもらう準備中ですが、早くても掲載は1 1月下旬で、当面の資金集めが緊急課題です。 そこでこの掲示板を見ている皆さんに、別掲のような緊急募金を訴えます。大学や職 場の仲間にも呼びかけていただければ幸いです。 連絡先:史料ネット神戸センター 〒657−8501 灘区六甲台町1−1 神戸大学文学部内 TEL/FAX078−803−5565 mail: yfujita@lit.kobe.-u.ac.jp 振込先 銀行口座 さくら銀行 十三支店 普通 3401070 名義 阪神大震災対策歴史学会連絡会 事務局長 藤田 明良 郵便口座(日本史研究会) 01090−7−23009 名義 阪神大震災対策歴史学会連絡会
山陰大地震 史料ネット情報 6号 1.緊急報告・日野町黒坂地区の地震被害(奥村 弘) 10月22日に実施した緊急調査のなかで、特に被害が深刻であった日野町黒坂地 区について報告する。黒坂地区は、近世初期関氏によって開発された城下町で、その 後鳥取藩領となり、家臣の福田氏の給地で、陣屋が置かれていた。また、中世以来の 「たたらの道」としても知られたところである。日野町役場で教育長から紹介された 歴史民俗資料館の川上さんからさらに、この地区の歴史文化財に詳しい方として牧智 也さんを紹介され、黒坂地区の公民館で待合せた。公民館は前日まで避難所になって おり、場所を移動した直後であった。その後、牧さんの案内で地区内を調査した。 黒坂地区は、近世の陣屋の街並がよく保存されており、宿場町と陣屋をあわせたよ うな景観で、史料だけでなく歴史的景観としてもきわめて重要であると感じた。ほと んどの家は被害をうけており、左右前後に傾いた家も多く、ざっと見た限り、七割程 度は、半壊ではないかとの印象を受けた。したがって、もしこのまま解体工事がすす めば、街並は大きく変わることが想定される。近世だけでなく、近代についても山陰 合同銀行の紋章が彫られた家など、他にはあまり見られない家屋があったが、これも 土台部分がずれるなど大きな被害を受けていた。案内してくれた牧さんと、歴史的景 観の保全も含めた対応ができないものか、話し合いをした。 牧さんは、公民館長も務めた方で、今回の地震でも、歴史資料がゴミとして捨てら れないように地区の方にお願いするなど、積極的に動かれている。しかし、ご自宅は 被災しており、牧さん自身が今夜どこで寝ようかということ考えなければならない状 況である。このように、黒坂地区の被災状況は、日野町の他の地区に比べても大きく、 阪神淡路大震災の時と同様、生活復旧が大変であると感じた。ただ大けがをされた人 がなく、この点では阪神淡路大震災よりは、歴史文化財保全を心理的にも行いやすい 状況であるとも思った。 個々のお宅を訪問する時間はほとんどなかったが、近世後期に建てられたと思われ る牧さん宅の向いの家の内側に入らせていただいた。阪神淡路大震災同様、見た目以 上に中はひどい状況で、柱は曲がっており、たっているのがやっとという状況であっ た。被災された老齢のご当主に史料についてお聞きしましたが、これも大震災と同 様、どうしようもないと感じられているようである。かなり古いふすまで、中に古文 書が張り付けてあることも知って居られながら、焼かざるを得なかったと話されてい た。 家の内部には、他にもふすまが置かれていました。下張りには、日清戦争時の軍 隊の後援組織の資料や、証文類が確認できたので、保存していただくことになった (日野町では、ふすまの下張りなどから古文書をはがして保管するということが、地 域の人たちによって地震以前から行われていたようである)。さらに家の系譜に関す る史料も、保全をお願いした。阪神大震災時と同様、被災された方になるべく早く歴 史資料の保全をお願いし、地元のどこかに一時保管することが、現在緊急に求められ ている。また調査の中で、やはり阪神と同様、はやくから古物商が現地に足を運んで いたこともわかった。この点でも、古物商が目をつけないようなものでも歴史的価値 があることを、地元の方に早く伝えることが重要であると思う。 調査後の関係者の協議で、10月28・29日に、ここで史料の緊急保全を行な うこととなった。はその意また出来るだけ早く、復興にむけて歴史的景観を盛り込む こと、それに対する援助を行うことを要請することが重要だと考える。これらについ て、全国の皆さんから、支援や助言をお願いしたい。 2.日野町緊急レスキュー調査 10月28・29日の両日、史料ネットと島根大学・京都造形大学などのメンバーの べ50人ほどが、日野町に入り、地元の歴史研修会や公民館と協力して実施予定。今 回の対象は黒坂地区が中心。家々を訪ねて、地域の歴史を伝える古文書や古い記録・ 写真・絵・書物などを、公民館や歴史民俗資料館など、安全な場所に移動させ、一時 保管する作業を行なう。
山陰大地震 史料ネット情報 6号 日野町黒坂地区の詳しい調査報告 (奥村弘:神戸大学助教授、史料ネット代表) 10月23日に訪問した黒坂地区の概要を紹介します。 黒坂地区は、近世初期関氏によって開発された城下町で、その後鳥取藩領となり、 家臣の福田氏の給地で、陣屋が置かれていたとのことです。日野町役場で教育長から 紹介された、歴史民俗資料館の川上さんから、さらに紹介を受け、この地区の歴史文 化財に詳しい方として牧智也さんを紹介されました。 黒坂地区の公民館で牧さんをお会いしました。公民館は前日まで避難所になってお り、場所を移動した直後でした。その後牧さんの案内で地区内を調査しました。 黒坂地区は、近世の陣屋の街並がよく保存されており、宿場町と陣屋をあわせたよ うな景観で、史料だけでなく歴史的景観としてもきわめて重要であると感じました。 ほとんどの家は被害をうけており、左右前後に傾いた家も多く、ざっと見た限り、七 割程度は、半壊ではないかとの印象を受けました。したがってもしこのまま解体工事 がすすめば、街並は大きく変わることが想定されます。近世だけでなく、近代につい ても山陰合同銀行の紋章が彫られた家など、他にはあまり見られない家屋がありまし たが、これも土台部分がずれるなど大きな被害を受けていました。案内してくれた牧 さんと歴史的景観の保全も含めた対応ができないものかと話し合いをしました。 牧さんは、公民館長も務めた方で、今回の地震でも、歴史資料がゴミとして捨てら れないように地区の方にお願いするなど、積極的に動かれています。しかしならが、 ご自宅は被災しており、牧さん自身が今夜どこで寝ようかということ考えなければな らない状況であると述べられているように、黒坂地区の被災状況は、日野町の他の地 区に比べても大きく、阪神淡路大震災の時と同様、生活復旧が大変であると感じまし た。ただ大けがをされた人がなく、この点では阪神淡路大震災よりは、歴史文化財保 全を心理的にも行いやすい状況であると思いました。 個々のお宅を訪問する時間はほとんどなかったのですが、近世後期に建てられたと 思われる牧さんのおむかえの家の内側に入らせていただきました。阪神淡路大震災同 様、見た目以上に中はひどい状況で、柱は曲がっており、たっているのがやっととい う状況のようでした。被災された老齢のご当主に史料についてお聞きしましたが、こ れも大震災と同様、どうしようもないと感じられているようでした。かなり古いふす まで、中に古文書が張り付けてあることも知って居られながら、焼かざるを得なかっ たと話されていました。なお家の内部にはふすまが置かれていました。下張りには、 日清戦争時の軍隊の後援組織の資料や、証文類が確認できましたので、保存していた だけるようお願いしました(日野町では、ふすまの下張りなどから古文書をはがして 保管するということが、地域の人たちによって地震以前から行われていたようです)。 さらに家の系譜に関する史料も、保全していだけるようお願いしました。大震災時同 様、なるべく早く被災された方に歴史資料の保全をお願いし、歴史資料を地元のどこ かに一時保管することが、現在緊急に求められていると考えます。また調査の中で、 大震災同様、はやくから古物商が現地に足を運んでいたこともわかりました。この点 でも、古物商が目をつけないようなものでも歴史的価値があることを地元の方に早く 伝えることが重要であると思います。 以上のことを考えあわせるなら28日、29日の史料保全活動はその意味できわめ て重要であると思います。また早期に、復興にむけて歴史的景観を盛り込むこと、そ れに対する援助を行うことを要請することが重要だと考えます。いい方法がないでし ょうか。
山陰大地震 史料ネット情報 5号 1.22日の現地調査・協議の報告 @参加者 ・神戸から 奥村弘(神戸大学)、馬場義弘(滋賀大学)、藤田明良(天理大学) ・鳥取県 岸本覚(鳥取大学)、山藤良治(米子高専)、杉本良巳(山陰歴史館) ・島根県 竹永三男(島根大学)、小林准士(島根大学)、居石由樹子(宍道町史) 高橋利明(島根大3回生)、山下和秀(島根大M1) @行動日誌 11:00 山陰歴史館(米子市)集合 史料ネットより趣旨と阪神大震災時の教訓説明 情報の突合せと協議 12:30三グループに分かれて、被災地調査へ ・日野方面(奥村、岸本、居石、高橋) (他に、テレビ・新聞など報道陣の取材同行あり) ・境港、大山方面(馬場、山藤) ・伯太方面(竹永、小林、藤田、山下) 18:30再び山陰歴史館に集合、今後の対応協議 @個々の被災概況 ・日野:被災家屋が多い。既に解体も進行中。特に歴史的建造物の多い黒坂地区では 約8割が全半壊、解体の可能性あり。根雨の近藤家の史料群は地元研究者により緊急 保全済み。町内でも関係者が、史料破棄には気をつけているが既に解体が進行してお り、破棄されるもののなかには、地域の歴史や文化を伝えるものもかなり含まれてい る。 ・境港:全壊家屋は全体からみれば一部だが、既に解体されているものもある。歴史 資料の破棄などは今のところ確認されてない。 ・大山:家屋の被害は少ないが燈篭などの倒壊は多い。屋内の歴史資料は今のところ 大丈夫。 ・伯太:町内の各所に被災家屋が散在。解体などの動きはまだ目立ってない。町教委 と協議し、地区の文化財専門委員と連携して保全する体制の立ち上げを始める。 2、今後の対応 ・解体撤去が急速に進行している日野町黒坂地区には、緊急調査レス キューが必要。今度の土日(28・29日)に第1段実施を予定。 ・他の場所については当面、地元の対応を見守り、要請や行動提起があれば積極的に 対応する。 ・時間の制約で調査できなかった西伯町や安来市などの情報収集に つとめる。 ・救援活動においては、地元市町村と関係者との連携を重視し、救出史料も地元市町 村保管を原則とする。 ・活動のための募金を募る。 @この活動についての問合せなどは、史料ネット神戸センターまで。 〒657−8501 灘区六甲台町1−1 神戸大学文学部内 TEL/FAX078−803−5565 mail: yfujita@lit.kobe.-u.ac.jp 3、22日の現地調査に関する報道 @NHK鳥取放送局 地震情報より(10月23日) 鳥取県西部地震で、建物に大きな被害が出た鳥取県日野町で、22日、神戸大学 などの研究グループが地震で町内に残る歴史資料などが散逸しないよう被害状況を調 査しました。 日野町を訪れているのは、震災で捨てられたりしがちな地域の貴重な古文書など を保全していこうと活動している、神戸大学などの研究グループ、「歴史資料ネット ワーク」のメンバーなど4人です。 22日は、グル−プの代表の神戸大学の奥村弘助教授らがおよそ150年前に建 てられた、木造二階建ての建造物「近藤家」を訪れ、地元の人から地震の被害状況に ついて説明を受けながら、建物の外観や蔵の中に保存されている古文書の状況を見て 回りました。近藤家の建物も、蔵の壁が崩れるなどの被害を受けましたが、中に保管 されている18世紀後半の貴重な古文書などおよそ二万点は、建物の作りがしっかり していることや、書類の保存方法が良かったことなどから、大きな被害はありません でした。 奥村助教授は、「思ったより被害が少なくてよかった。今後も、貴重だと気づかず に捨てられてしまう地域の歴史資料の保存に手を尽くしていきたい。」と話していま した。
山陰大地震 史料ネット情報 4号 1.史料ネットの現地調査(10月22日)の予定について 10:40 JR米子駅着 11:00 米子市立山陰歴史館で地元関係者と協議 12:30 被災地巡検(日野町、西伯町、伯太町など) 18:30 JR米子駅発 ・参加予定者(20日現在:協議のみ参加、或いは現地合流も含む) @史料ネット 奥村弘(神戸大学)、馬場義弘(滋賀大学)*車、藤田明良(天理大学) @鳥取県 岸本覚(鳥取大学)、山藤良治(米子高専)、杉本良巳(山陰歴史館) 影山氏(日野町近藤家で待機) @島根県 竹永三男(島根大学)、小林准士(島根大学)*車 居石正和(島根大学)または居石由樹子(宍道町史)*車 松本美和子(宍道町史) ・今回の被災地調査は、状況把握が中心となる予定です。 グループを複数に分けて行動する案も出ており、午前中の協議の なかで判断したいと思います。 ・この調査に関する事前報道 10月20日 中国新聞3面[神戸の研究者団体、歴史資料保護へ被災地調査 −破棄・損壊防止に保管法など助言−] 10月21日 神戸新聞(記事未入手)、山陰中央新聞(同左) 2、被災地の関係機関の対応と情報 @田村達也氏(鳥取県立公文書館)より(10月21日) ・19日に県教委文化財課長名で『震災後における古文書等の保全について』という 依頼文を各市町村教委あてに送る。 ・19〜20日にかけて、被害の大きい境港市・米子市・西伯町・会見町・溝口町・ 日野町を、田村が直接訪問し、上記文書を渡す。だが復旧作業のため教委に人がいな いところがほとんどであった。 ・日野町の廃棄物捨て場(滝山公園内)を見分したが、膨大なゴミの山で、文書が あったとしても見つけるのは難しい。 ・19日に訪問した西伯町の被災旧家一軒より、史料を公文書館に預かる。 ・全壊判定を受けた溝口町役場の片付けで、明治以降の役場文書が出てきたので、2 1日に公文書館より調査受け取りに行く。 ・被災地の『鳥取県史』関係史料所有者に電話で状況を確認。家屋や石造物は損壊し たが、史料は無事なところが多い。だが、被害が大きかったり、所蔵者の不在や代替 りで、安否が不明なケースも数件あり。 @小林准士氏(島根大学)より(10月21日) 昨日、伯太町の教育委員会に電話して聞いてみたところ、 伯太町内で古文書を所有されている家のうち、1軒の土蔵が 崩れているそうです。ただし、留守にされているので、 内部の被災状況については見ることができないということでした。 教育委の方によれば、町内で現在古文書をもっておられる家は、 土蔵が崩れたお宅を含め2軒ということですが、 いずれも当主の方は不在だそうです。 地域の事情により、このようなケースがおそらく多いのではないか という気がします。対策を考えておく必要があると思いますので、 あらかじめお知らせしておきます。 3、地震・報道関係HPなどの関連情報 ・NHK鳥取放送局 地震関連情報HPより(10月19日18:00) 鳥取県西部地震による被害の後かたづけをしていた溝口町の住宅から、軍用のものと 見られる古いけん銃がきょう見つかりました。 警察では、建物の後かたづけに伴って、今後も昔のけん銃などが見つかる可能性があ るとして、見つけた場合にはすみやかに警察に届け出るよう呼びかけています。 けん銃が見つかったのは、今回の地震で被害を受けた溝口町の76歳の女性の住宅で す。 家の人が後かたづけをしていたところ、母屋の二階の押入れから軍用のものと見られ る古いけん銃と、古い空気銃、あわせて2丁が見つかり、きょう警察に届け出まし た。 この家は、建てられてから100年以上経っていて、見つかったけん銃は、届け出た 女性の祖父の遺品ではないかと見られています。 警察によりますと、こうした古いけん銃は、今でも実弾を発射できるおそれがあり、 持つことが禁止されています。 今回の地震では、古い家屋や蔵も被害を受けていて後かたづけや解体に伴って古いけ ん銃などが見つかる可能性があるとして、警察では、「簡単な手続きで安全に処分す るので、古いけん銃を見つけたらすみやかに届け出てほしい」と呼びかけています。 ・同(10月20日18:00) 鳥取県西部地震で大きな被害をうけた島根県伯太町で、特産の陶器母里焼を作る唯一 の窯が地震で壊れてしまい、母里焼がなくなってしまうのではないかと心配されてい ます。 伯太町の母里焼は、江戸時代後期からおよそ150年にわたって続いている焼き物 で、山の斜面にそって階段状にレンガで築いた登り窯を使って皿や茶碗など生活に身 近な食器を中心に作られています。 母里焼の窯元は既に1軒だけになっていますが、今月6日の鳥取県西部地震でその窯 がすべて壊れてしまいました。 また当時製作中だった陶器や完成した陶器数千個も壊れたほか、陶器を作るときに必 要な井戸水が地震以来濁っているうえ、殆ど底をついてしまっています。 窯元の稲垣宏さん71才は壊れた窯の後片付けなどをしていますが窯を元に戻すメド は全くたっておらず、このままでは母里焼がなくなってしまうのではないかと心配さ れています。 稲垣さんは「登り窯をなんとか作り直して母里焼の伝統を守っていきたい」と話して いました。 ・鳥取西部地震現地ボランティアセンターHPより 日野町下榎地区では16日にお墓68基、100人もの東本願寺のご支援と地元の方々の協 力により7割近くは修復しました。その後、墓前では供養の祈りが捧げられ、涙を流 す姿があちこちでみられました。「今日を待っていました・・・」。くたくたになり ながら、みんなで汗をかきながら、夕日を眺めました。 http://www.response-jp.org/tottori/ ・岡山県新見市の被害情報 鳥取県と接する北部の千屋地区等の被害状況 (倒壊した土蔵などの写真あり) http://www.city.niimi.okayama.jp/kabetsu/soumu/saigai.html 4、関連情報 ・神戸新聞HPより(10月20日) [保護だけでなく活用を 県教委に文化財保護審] 兵庫県文化財保護審議会(石野博信会長)は十九日、文化財や歴史遺産をまちづく りに生かすため、専門家や市民が調査、研究を行う「ヘリテージ・マネジャー」を養 成することなどを県教委に求める提言を発表した。阪神大震災では意識されないまま 失われた文化財が数多かったため、保護だけでなく地域での活用を考えてもらうのが 狙いで全国的にも例がない。県教委も提言を受け、来年度にも講習会を始める意向を 明らかにした。 提言では、阪神大震災で被災した歴史的建造物のうち、修復されたのは指定文化財 が中心で、身近な歴史遺産を守るためには「文化財指定制度」による保護だけでは難 しいと指摘。「人」の育成が必要とした。 ヘリテージ(遺産)・マネジャーとしては、歴史文化遺産の保存修復の技術を持つ 専門家▽まちづくりの総合プロデュースを行うコンサルタントなど▽“歴史遺産サ ポーター”である市民—の三者を想定。専門の講習を一年間程度受けたうえで県教委 が登録し、人材バンク化する。 実際の活動は、広く知られていない文化財の調査・発見▽保存状態に応じた修理や 活用方法の検討▽歴史文化遺産を生かしたまちづくりへの参加—など。歴史ある建物 が老朽化し、修理のめどもないケースでは、まちのイメージに合わせて店舗など他の 用途に転用できないかを探り、伝統技術を生かした修理を行って再生させていくこと が考えられる。県教委は「二〇〇二年度には発足できるように検討を進めたい」とし ている。 提言では他にも、高齢者や障害者が文化財に親しめるよう、ハード、ソフト両面で のバリアフリー化に配慮することも求めている。 伯太町の母里焼は、江戸時代後期からおよそ150年にわたって続いている焼き物 で、山の斜面にそって階段状にレンガで築いた登り窯を使って皿や茶碗など生活に身 近な食器を中心に作られています。 母里焼の窯元は既に1軒だけになっていますが、今月6日の鳥取県西部地震でその窯 がすべて壊れてしまいました。 また当時製作中だった陶器や完成した陶器数千個も壊れたほか、陶器を作るときに必 要な井戸水が地震以来濁っているうえ、殆ど底をついてしまっています。 窯元の稲垣宏さん71才は壊れた窯の後片付けなどをしていますが窯を元に戻すメド は全くたっておらず、このままでは母里焼がなくなってしまうのではないかと心配さ れています。 稲垣さんは「登り窯をなんとか作り直して母里焼の伝統を守っていきたい」と話して いました。
山陰大地震 史料ネット情報 3号 1.被害と対応の情報(文責:史料ネット) 【島根県】(島根大学の竹永三男氏より) ・10月16日(月)午後、島根県庁総務課文書係長と懇談。 同係では県としての対応を真剣に検討しており、各部署や大学との 連携を模索中との、印象を受けた。 ・被災町村の古文書講座や自治体史の関係者と連絡がとれつつある。 【鳥取県】(鳥取県立博物館の坂本敬司氏より) ・山陰歴史館の被害は現在ほぼ復旧。館長室のロッカーが倒れ、上段に保管していた 古文書・兜が散乱した。 ・被害の大きい日野町・西伯町などは、県公文書館で被害情報を収集中。担当者は今 週の木・金にも被災地に入り現地調査の予定。 ・現在、県より市町村に宛てて、古文書など歴史資料を破棄しないよう注意を呼びか ける文書を準備中。 2.22日の史料ネット現地入の計画骨子が固まる 目 的:歴史資料や建造物・石造物など地域遺産の被害状況調査と 地元関係者との対応協議 日 時:10月22日(日) 参加者:奥村弘(代表:神戸大学助教授) 藤田明良(事務局長:天理大学助教授) 馬場義弘(運営委員:滋賀大学講師) 当日の予定(確定は前日の21日土曜日) 10:40米子駅着 11:00山陰歴史館(予定)で、地元の歴史資料・文化財関係者と協議 12:30車で米子から日野町へ向う 13:30日野町内の旧家など訪問調査 日野町より、他の町村に寄りながら、米子方面に戻る。 18:00(または18:30)米子駅発 以上 3.史料ネットより地元マスコミ宛てに依頼文を送付 鳥取西部大地震被災地に歴史資料・文化遺産への 注意を喚起する記事掲載のお願い このたびの大地震でこうむられた大きな被害と、今も続く不自由な生活に対し、 謹んでお見舞い申し上げます。また昼夜を問わず情報発信に奮闘されている報道関係 者に敬意を表します。 私たち歴史資料ネットワークは、阪神淡路大震災の被災地で、歴史資料を始めと した文化財の救出・保全をおこなってきた歴史研究者の団体です。私たちは、五年前 の震災時に、全国の歴史学会など関係団体から支援をうけて、自治体や市民と協力し ながら、地域社会の民間史料の救出や街角の文化財の被害調査などをおこなってきま した。 私たちがこの活動を始めたのは、博物館や図書館に収蔵されている史料や、国や自 治体の指定文化財だけでなく、住民の生活空間のなかにある歴史遺産が、地域史の復 元には欠かせないという思いからでした。この阪神淡路大震災における歴史資料・文 化財の保全復旧活動は、少なくない成果をあげ、被災住民からも「地域の記憶を次代 に残すことができた」と好意的に受け止められました。被害調査で新たに発見された 史料も少なくありません。 だが、その一方で、損壊家屋の解体の際に焼かれた古文書や、道路復旧で撤去され た石造物も数多くありました。それまであった歴史遺産の三分の二が、被災地域から 滅失してしまったという報告もあります前例がなかったこともあり、活動の始動が地 震発生から約1ヵ月後と、遅かったことが現在の反省点の一つとして、挙げられてい ます。「役に立つと知っていたら捨てなかったのに」と叱られたこともしばしばあり ました。地域のなかの歴史遺産を災害による滅失から守るためには、専門家やマスコ ミが早くから注意を喚起しなければならないというのが、阪神大震災の教訓の一つで す。 今回の鳥取県西部地震の被災地は、歴史的環境の豊かな地域として知られていま す。築数十年という古い家屋も多いとききます。収蔵施設に保管されているもの、或 いは文化財指定を受けているものの他にも、地域のあちらこちらに、先人の営為を伝 える歴史資産、文化遺産が数多く存在するはずです。それらが家屋の修理や解体の 際、また荷物の片付けの際に、捨てられたり売られたりする危険があります。特に高 齢者だけの家、空家になっている家の場合、その可能性はより高くなります。 今回の被害を乗り越えて保全されれば、地域の再生にむけた心の糧になるはずで す。古文書や石造物など地域遺産が、地震で姿を消してしまわないよう、関係者は手 立てを尽くすべきではないでしょうか。 私たちは、10月8日以来、両県の大学・博物館・図書館・史料保存機関など、 地元関係者と情報収集と対応協議を進めています。すでに日野町などから文化財や古 文書のある旧家の被災情報が入っています。10月22日には、当ネットワークのメ ンバーが被害調査と地元との協議のために、現地(米子・伯太・日野など)に入る予 定です。 地域の歴史遺産を消滅から防ぐためにも、阪神大震災の教訓を活かすためにも、 是非、貴社が記事でこの問題を取り上げていただくようお願いします。コメントや資 料の提供など取材には最大限の協力をさせていただきます。 以 上
山陰大地震 史料ネット情報 2号 (鳥取県西部地震が正式名ですが、島根県東部や岡山広島両県 北部にも被害が広がっているため、ここでは当面「山陰大地震」を 使用します。) ———————————————————————————— 現地の被害・対応情報 (この情報は現地や関係者からよせられたものを史料ネットがまとめた もので、文 責は史料ネットにあります) ・鳥取県立博物館(10月10日) 鳥取市はほとんど被害なし。博物館も書架が倒れるなどの被害もなかった。米子市立 山陰歴史館で被害が出ているもよう。被災地には過疎の進行により、高齢者のみとい う旧家も少なくない。震災に遭われた家に、所持している古文書類を破棄しないよう 連絡する手立てを検討中。 ・鳥取県立公文書館(10月10日) 被害が大きかったのは西部なので、東部の鳥取市は大丈夫。一件、民家で文書調査 していたところが被害があったので、ケア必要と考えている。 ・島根県立図書館郷土資料室(10月10日) 県域の史料調査員制度を活用して、被災史料調査行なうことを検討中。 ・NHK鳥取放送局被害情報より(10月13日) 米子市の国重要文化財「後藤家住宅」(江戸時代の廻船問屋)を、13日、文化庁の 調査官が訪れ、被害状況を調査。同家は一番蔵の壁が崩れたり、主屋の柱がずれたり するなどの被害を確認。調査官は、「国の補助などで出来るだけ早く修理したい」と 談話。県教育委員会の調査によれば鳥取県内では、後藤家住宅の他にも国や県それに 市町村指定の30以上の文化財が被害を受けている。 http://www.nhk.or.jp/tottori/saigai/zishin.htm ・竹永三男氏@島根大学 今週の早い中に、島根県総務部総務課情報公開係と対応を協議したい。 ・今津勝紀氏@岡山大学(10月16日) 新見市には数十件の家屋被害がでている。哲多町内にも被害はでていますが、解体し なければならないような家はないようだ。哲多町からも鳥取県日野町にボランティア で出かけていた方々からの情報によると、日野町下槇地区がかなり被害を受けてい て、古文書を所蔵する家もかなりあるそうだ。
========================== 山陰大地震 史料ネット情報 2号 2000.10.13 ・この情報は、阪神大震災の時に結成された歴史資料ネットワーク (阪神大震災対策歴史学会連絡会の現地組織、 代表:奥村弘・神戸大学助教授、事務局:神戸大学文学部内)が、 全国の関係者に向けて、発信しています。 ・今回の地震は、人的被害は総体的に少なかったものの、旧家や 寺社の建物や文物、地域の石造物等の損壊は相当あるようです。 また、復旧が早い分、損壊家屋等の解体・撤去も早く、 長年、残されていた昔の文書や記録が、価値を自覚される前に 不要物とともに破棄されてしまう危険性があります。 特に湿損に弱い紙の史料は、雨漏りなどで傷むので、 対応を急がなければなりません。 (但し、湿損しても、食品冷凍施設などで急速凍結する処置をとれば、 現在の修復技術で復元が可能です) 阪神大震災の被災地では、所有者の代替り等の要因も重なり、 自治体史編纂時に調査された史料が滅失するケースも 少なくありませんでした。一方で、被害調査で新たな史料の 発見もあり、地域の人々から喜ばれた例もあります。 ・歴史資料ネットワーク(通称:史料ネット)では、 今回の鳥取西部大地震について、 10月7日緊急代表・事務局会議、10月11日第74回運営委員会で 以下のような対応方針を暫定的に決定しました。 1、 現地の関係者と連絡をとり、当面、被害状況や対応等の情報を 収集・発信する情報センターの役割を担う。 2、現地の関係者・自治体にメッセージ(後掲)を送り、阪神大震災の 経験と教訓を、伝える。(特に、地域にある民間所在史料・文化財 に対する被害把握とケアの重要性) 3、マスコミ等を通じて、損壊家屋にある古い文書や記録、損傷した 石造物等、地域の歴史遺産が破棄されないよう呼びかける。 4、10月22日に、関係者との協議や状況確認のため、代表以下 数名が現地入りする。 5、阪神大震災時に、連携した諸機関・団体等との連携を密にする。 ———————————————————————————— ・被災地へのメッセージ 鳥取西部大地震被災地の歴史資料・文化財関係者の皆さんへ このたびの大地震でこうむられた大きな被害と、今も続く不自由な生 活に対し、謹んでお見舞い申し上げます。 私たち歴史資料ネットワーク(事務局・神戸大学文学部内)は、 阪神淡路大震災の被災地で、歴史資料を始めとした文化遺産の救出 ・保全をおこなってきた歴史研究者の団体です。私たちは、五年前の 震災時に、全国の歴史学会など関係団体から支援をうけて、 自治体や市民と協力しながら、地域社会の民間史料の救出や 文化財の被害調査など、被災地における文化遺産の保全・再生の 取り組みおこなってきました。 この阪神淡路大震災における歴史資料・文化財の保全復旧活動は、 少なくない成果をあげました。だが、その一方で、損壊建築物の 解体の際に焼かれたり、道路復旧で撤去・破棄された古文書や 石造物も多く、それまであった文化遺産の三分の二が、 被災地域から滅失してしまったという報告もあります。 前例がなかったこともあり、活動の始動が地震発生から 約1ヵ月後と、遅かったことが現在の反省点の一つとして、 挙げられています。 今回の鳥取西部大地震の被災地は、歴史的環境の豊かな地域 として知られいます。 収蔵施設に保管されているもの、或いは文化財指定を受けている ものの他にも、地域のあちらこちらに、先人の営為を伝える 歴史資産、文化遺産が数多く存在するはずです。 それらが今回の大地震を乗り越えて保全されれば、地域の再生に むけた心の糧になるはずです。古文書や石造物など地域遺産が、 地震で姿を消してしまわないよう、関係者は手立てを尽くすべきで はないでしょうか。同じ体験をしたものとして、私たちも出来うる限りの 支援・協力をしていくつもりです。 2000年10月10日 歴 史 資 料 ネ ッ ト ワ ー ク 代表幹事:奥村 弘(神戸大学助教授) —————————————————————————————— ・参考 ・NHK鳥取放送局発 地震関連情報 10月6日 ・22:32 10月6日鳥取県教育委員会が午後9時半現在で地震による県内の文化財の被害状況 に ついてまとめたところによりますと、国の重要文化財や史跡が6カ所、県の史跡 や文化財が2カ所、町村の文化財が4カ所で、壁が崩れたり破損したりしています。 このうち、国の重要文化財に指定されている米子の後藤家住宅が瓦葺きの塀が崩れた りふすまの壁が破れたりしたほか、同じく国の重要文化財に指定されている大山町の 大山寺の木造阿弥陀仏如来と両脇にある侍像の後ろに置かれている光背が傾きまし た。また倉吉市のある国の史跡の三明寺古墳で横穴式石室の石が落ちるなどの被害が 出ているということです。 10月7日・10時57分 きのう震度6強を観測した鳥取県日野町では余震が続く中、JRの復旧作業が行わ れているほか住民たちが自宅などの後かたづけに追われています。日野町ではきょう も余震が続いていて、700人が町内の避難所に避難しています。… このほか、日野町内では長楽寺にある「十二神将像」のうち数体が、 腕が取れるなどして破損していたことがわかりました。 10月7日・22時21分 鳥取県教育委員会が午後9時現在で地震による県内の文化財の被害についてまとめ たところによりますと、国の重要文化財や史跡が7か所、県の史跡や保護文化財が5 か所、市町村の文化財が12か所で、壁が崩れたり壊れたりしています。 このうち国の重要文化財に指定されている大山町の門脇家住宅では、茶室の壁に亀 裂が入ったり、灯籠が崩れて落ちているのが今日新たに確認されました。また、米子 市にある県の名勝深田氏庭園でも土塀の一部が剥がれ落ちる被害が出ているというこ とです。 ————————————————————————————— ・その他、今回の地震の歴史資料・文化財などに関する情報が あれば、是非寄せてください。また、意見、要望、問い合わせ等も 受け付けます。 連絡先:史料ネット神戸センター 〒657−8501 灘区六甲台町1−1 神戸大学文学部内 TEL/FAX078−803−5565 mail: yfujita@lit.kobe.-u.ac.jp
鳥取西部大地震被災地の歴史資料・文化財関係者の皆さんへ このたびの大地震でこうむられた大きな被害と、今も続く不自由な生活に対し、謹 んでお見舞い申し上げます。 私たち歴史資料ネットワーク(事務局・神戸大学文学部内)は、阪神淡路大震災の 被災地で、歴史資料を始めとした文化遺産の救出・保全をおこなってきた歴史研究者 の団体です。私たちは、五年前の震災時に、全国の歴史学会など関係団体から支援を うけて、自治体や市民と協力しながら、地域社会の民間史料の救出や文化財の被害調 査など、被災地における文化遺産の保全・再生の取り組みおこなってきました。 この阪神淡路大震災における歴史資料・文化財の保全復旧活動は、少なくない成果 をあげました。また、当初心配されていた被災住民の反感もほとんど無く、むしろ好 意的な反応がほとんどでした。だが、その一方で、損壊建築物の解体の際に焼かれた り、道路復旧で撤去・破棄された古文書や石造物も多く、それまであった文化遺産の 三分の二が、被災地域から滅失してしまったという報告もあります。前例がなかった こともあり、活動の始動が地震発生から約1ヵ月後と、遅かったことが現在の反省点 の一つとして、挙げられています。 今回の鳥取西部大地震の被災地は、歴史的環境の豊かな地域として知られいます。 収蔵施設に保管されているもの、或いは文化財指定を受けているものの他にも、地域 のあちらこちらに、先人の営為を伝える歴史資産、文化遺産が数多く存在するはずで す。それらが今回の大地震を乗り越えて保全されれば、地域の再生にむけた心の糧に なるはずです。古文書や石造物など地域遺産が、姿を消してしまわないよう、関係者 は手立てを尽くすべきではないでしょうか。同じ体験をしたものとして、私たちも出 来うる限りの支援・協力をしていくつもりです。 2000年10月10日 歴 史 資 料 ネ ッ ト ワ ー ク 代表幹事:奥村 弘(神戸大学助教授) 〒657-8501 神戸市灘区六甲台町1-1 神戸大学文学部内TEL/FAX078-803-5565 e-mail yfujita@lit.kobe-u.ac.jp